大雨や地震など災害が頻発する中、「自分で身を守れる子どもを育てよう」と、幼少期に「防災絵本」を活用した防災教育の試みが広がっています。「やがては災害から地域を守れる人材になってほしい」と関係者は期待します。

子どもの視点で

 「地震や津波で危険が迫ったら、一人でも逃げなければいけないよ。家に帰ったら家族と一緒に、避難の時にはどうするか話してみてください」

 今月5日、北海道白老町の町立萩野小であった「防災絵本」を活用した学習会。地域住民で防災活動に取り組む「しらおい防災マスター会」会長の吉村智さん(70)の話を、参加した4年生20人が真剣な表情で聞いていました。町内では、8月末の台風10号の接近で太平洋に面した住宅が高波で破壊されるなど、大きな被害が出たばかりでした。

 会を設立した事務局の民部(みんぶ)吉治さん(72)は以前から、津波の被害を何度も受けてきた東北地方の三陸沿岸地域に伝わる「津波てんでんこ」の教えを広げ、緊急時には自分一人でも逃げることの大切さを説いてきました。「巨大地震では、海に面する白老町は確実に大きな被害を受けるだろう」と考え、幼稚園や保育園、小学生ら子どもたちへの防災教育に力を入れています。

 そこで子どもの成長段階に合わせた学習に取り入れたのが防災絵本です。読み聞かせているのは、岩手県釜石市の住民が2011年の東日本大震災による大津波で経験したことを題材とした絵本で、民部さんは「実際にあったことだけに、子どもたちも自分に起こりうると真剣に聞いてくれる」と手応えを感じています。

 吉村会長も「知識があっても備えなければ減災にならない。まずは自分の身、次に家族、地域と、命を守れる人材を子どもの頃から育てていきたい」と力を込めます。

「幼い頃から啓発」

 札幌市防災協会は、13年に火事と地震が題材の防災絵本「おれさまこわいぞ」「おばけになって」の2冊を作りました。このうち地震がテーマの「おばけになって」では、少年と地震で死んだおばけの交流を通じて、地震の際にはテーブルの下に隠れて身を守ることが大事、と教えてくれる内容となっています。

 絵本を企画したのは当時、協会に勤めていた女性職員でした。防災教育では、子どもたちに火事や地震でどうしたら命を守れるか考えてほしいが、「単に怖いという感覚だけ知って終わることもある」ためです。絵本では、長年札幌市消防局に勤務した協会職員の山岡学さん(65)らの現場での経験も盛り込み、あっという間に燃え広がる火や地震で家具が転倒する場面をリアルに再現しました。

 山岡さんは「まずは災害を起こさないことと、起きた時は適切な判断ができるようになることが大切。時間はかかるが、幼い頃からの啓発が必要だ」と話します。絵本は市内の公立・私立幼稚園に送り、園児への読み聞かせに使われているといいます。

教訓と避難方法

 11月に絵本専門の図書館を開館予定の札幌市教育委員会などによると、阪神大震災や東日本大震災などを経て、防災教育の意義が強調されるようになり、防災絵本を活用する取り組みが全国で徐々に広まっているといいます。

 子ども向けの防災関連本は以前からありました。だが近年では、気象や災害のメカニズムを解説する内容に加え、災害で助かった人々の証言から導きだした教訓や避難方法といった、具体的な身の守り方への言及も増えています。